シリーズを読み続けた半年間、シビれっぱなしでした。
全19巻を読破してから数か月。その間何度もこの作品について書こうと思ったけれど、自分の受けた衝撃の大きさを表現できるとはとても思えず、取り掛かれない日々。
そして続編「楊令伝」の存在が気になって仕方がない。でも読み始めたら最後、他のものが一切手につかなくなることが分かっている。水滸伝が一区切りした段階で、しばらく放っておいた他の本やマンガに取り掛かろうと、我慢していました。
8月に入り満を持して手に取った楊令伝。やはり面白い。止まらない。
この調子だと水滸伝を振り返ることができないまま、どんどん時が過ぎ去り、楊令伝・岳飛伝と積み重なっていくばかり。そんな焦りが生まれてきて、ようやく書いてみる踏ん切りがつきました。
そんな水滸伝。う~ん…「スゴイ」という言葉しか出てこない。
あるいは、「最高」「ヤバい」「マーベラス」か…。
何かを「語る」ことがヤボで陳腐なことに思えてしまう。ケタ外れにとんでもない傑作。
とにかく人生でもっとも読書に熱中した体験を与えてくれたのがこの作品です。
中国・北宋末期の時代。腐敗しきった国家を打ち破るべく“志”のもと梁山泊に集う同志と、敵対する宋王朝との死闘の物語。
比類なきカリスマ、稀代の豪傑、天才的頭脳をもつ参謀など「スーパースター」もいれば、陰で支える間者や料理人、飛脚など「脇役」もいる。それぞれが背負う人生と心に秘めた誇りが、登場人物ごとに丹念に描かれ、そのすべてが胸に迫ってきます。
「敵」である宋側もしかり。それぞれに戦う理由や意地、迷い、そして矜持をもつ「血の通った」一人の人間として梁山泊に立ちはだかります。
世界中に同じ人間は一人もいないように、水滸伝に登場する膨大な数の人物は、一人ひとりが違った光を放っています。明るい光もあれば、かすかな光もある。でもそのどれもが個性をもち、全員が「輝いて」いるのです。
語ることがヤボと言いつつ、もっともらしいことを書き連ねてしまいましたが、つまりはカッコよく、愛しく、切ない、エンターテイメントのすべてがつまった大娯楽作品であります。
読んで損なし。でもその間は熱中しすぎて他のことが手につかなくなる覚悟をしておくことを忠告します。