唐突だけど、「嵐の素顔」工藤静香のこの曲を聴くとかならず浮かんでくる記憶がある。小学生のとき、父親と車で日本縦断の旅行をした。ひたすら車に乗って、カセットテープの音楽を聴きながら、通り過ぎていく街の風景を眺めていた。
父親は歌謡曲には興味がなかったから、きっと姉あたりが編集してもたせてくれたテープだったのだろう。なぜか嵐の素顔、そして爆風スランプのRunner。その二曲が、強烈にそのときの記憶と結びついている。
曲自体が好きかどうかとは別に、よく耳にした「あの曲」は「あの頃」とセットで、記憶のどこかにしまわれている。
たとえば辛島美登里の「サイレント・イヴ」。中学時代、田舎町でひたすら好きな女の子のことを考えて悶々としていた、実家の部屋が蘇ってくる。
ブラックアイドピーズのwhere is the loveを聴くと、オーストラリアのシェアハウスと、そこで毎日飲んでいたビールの味を思い出す。
セルジオメンデスのmas que nadaは、当時密かに気になっていた子が、ある日CDを焼いてぼくにくれたアルバムに収められている。天にも昇る心地で、擦り切れてもおかしくないくらいに聴きまくった。彼女は今どうしているのか...
ここ数年、以前ほどは音楽をあまり聴かなくなったけれど、やっぱり音楽は大事だ。
音楽を聴くことでしか思い出さない記憶がたくさんあるから。
いま聴いているあの歌は、10年、20年後、どんな思い出を甦らせてくれるだろうか。