カフェで朝食をとり一息ついたあと、
その日泊まる予定なのはAcaicia Courtというところですが、
が、実際は街の中心部からずいぶん離れていて(今Google Mapで調べると、そのカフェのあたりからは2kmもあります)、炎天下の中を、
それでも、たぶん40分くらいかかったと思いますが、
ホテルは海岸線沿いで、道路を挟んできれいな芝生が生え、
まずは汗だくの体を休めようと、木陰に座りこみました。
すこし休憩していると、いきなり話しかけられます。
「こんにちは」
日本語です。
「?」と思い振り返ると、
見た感じ30代の前半というところでしょうか。
いわゆるオージーのイメージであるボリューミーな体型ではなく、
「日本人ですか」と聞かれ、はいと答えると、「私、
聞いてみると、彼は奥さんが日本人で、
奥さんは沖縄出身で、彼も一時期移り住んだこともあり、
前の日に成田を出発したときから、
確か名前はウォルターと言いました。ケアンズのホテルでレセプションの仕事をしているそうで、その日は休日で・・・など、とてもフレンドリーに話をしてくれます。
こちらも、日本で住んでいたところとか、どんな仕事をしていたか、とかいろいろ話をしていました。
すっかり打ち解けて、話がはずんでいたところでした。
どんな話の流れかは忘れてしまったのですが、突然彼が「
「・・・。え!?」
という感じで、内心激しく動揺しました。しかしここは異国。
結婚して子どももいるって言ってなかったっけ?と思いながら、
なんてあれこれ考えていると、
曰く、もともとは女性が好きだったけれど、
そこからはもう男性にしか興味がもてず、奥さんとは離婚。
さっきまであれほど安らぎを覚えていた心はざわつきます。ゲイどうこうという以前に、その軽薄さ漂うヒストリーを聞かされ「
そんなこちらの心境を知ってか知らずか、
「オトコは好きじゃないですか?」
・・・これはもしや、、、ナンパか!?
勘弁してくれ・・と思いましたが、やはりここは異国。
「いやオレは女の人が大好きだし、日本に彼女もいるから」
すると彼は余裕の表情で
「最初はみんなそう言います。ぼくもそうでした。
コイツどんだけナンパしてんだ・・と思っているとついにウォルターは
「うちにきてエッチしませんか?きっと楽しい」
と誘ってきました。
いやいや、男が女をナンパするときでもそんな単刀直入に言わんだろ・・
その頃にはだいぶ落ち着きを取り戻してきていたので、きっぱりと「悪いけどほんっとに女の人にしか興味ないから。」と断りました。
それでも何度か食い下がってきましたが、断り続けているとようやく
「わかりました。あなたは本当に興味ないみたいね」と納得してくれたのでした。
わかってくれてよかった。その誘いさえしてこなければ、チェックイン待ちのぼくにとってはよい話し相手だったので、その後も少し会話を続けていたように思います。
少しして彼が、まだチェックインまで時間があるから、うちに来ないか、子どもももうすぐ学校から帰ってくるから、冷たいジュースでも飲みながら休んでいたらどうか。みたいなことを言い始めました。
このとき、長旅と炎天下の中で歩き続けた疲れがぼくの判断をおかしくさせたのか、「冷たいジュース」という響きがとてつもなく魅力的に聞こえました。
そして荷物をフロントに預け、彼の車で家に行くことに同意したのです。
今思えば、まったく何をしてるんだか、という感じです。
この期に及んでも、相手がゲイだからといって友達になれない訳じゃないし、なんておめでたいことを考えていました。
彼の家は、そこから車で10分ほど。1LDKほどのアパートでした。
たしかに子どもが生活している様子もあり、テレビにはプレステがつながっていました。
オレンジジュースをもらい、少し世間話をしていると、ウォルターがやはり言いました。
「やっぱりちょっとだけ、エッチしてみない?」
まだ言うか・・・と呆れましたが、冷静に考えると、「何もしないから」と言ってとにかく部屋に連れてきて勝負はそこから、というのはゲイでもノーマルでも関係なく、基本中の基本の作戦でしょう。
そんなこともわからずついて来た自分を嫌になりながら、今日何度目かの「ほんとに無理」の言葉を返しました。
ウォルターは軽薄な奴ですが、幸いなことにいたって温厚な人物で、最後には「わかりました。あなたタイプなのにもったいない」とかなんとか言いながらも納得してくれました。
そして彼の車でホテルまで送り届けてくれたのです。
ケアンズ到着から、ここまでわずか半日。
しかし途方もなく長い道のりを経て心身ともに疲労困憊の中、ようやくチェックインを果たすことができました。
続きはまた今度・・・