にほんご練習帳

思ったことや感じたことを文章に表現する訓練のためやってます。できるだけ毎日続けようと思ってます。

犬とわんこ

いつの頃からか「わんこ」という呼び方が定着した。
たぶんめざましテレビの「今日のわんこ」の影響だと思うけど、単にテレビの力というだけでなく、犬を飼っている人にとって「犬」と呼ぶことへの何となくの違和感が、「わんこ」支持へと一気に向かったのだと思う。


ぼくも子どもの頃には実家で飼っていた。
だから「ペット」や「犬」への違和感はもちろん、「飼う」と言うのさえなんだか変な感じがする。

うちはジャーマンシェパードのメスで、ぼくが小学生の頃に生後1ヶ月くらいでやってきた。
だから文字通り、一緒に育った「きょうだい」のような感覚だ。
遊んだりケンカしたり。
彼女は一家の主である父親の言うことはよく聞くが、ぼくの言うことなんてちっとも聞かなかった。
でもぼくが学校から帰ってきたら、つながれてる鎖がちぎれんばかりに駆け回って喜んでくれた。

一度、ぼくの通学の後を追って学校に乱入してきたこともあった。
田舎町で、うちのシェパードは有名だったから、すぐに先生がぼくのところに来て「早くなんとかして!」と叫んだ。
驚いて校庭に出たら、彼女はぼくを見つけて全速力で駆けてきて、いつもの体当たりをかましてきた。あのときの本当に楽しそうな顔が忘れられない。


やがてぼくが実家を出て、たまに帰省すると、同じく少しずつ大人になっている彼女は、落ち着いた出迎えを見せるようになった。でもピンと立てたしっぽは、変わらずブルンブルンと振られていた。


彼女が亡くなって、もう20年近く経とうとしている。
でもおなかを撫でたときの毛並の手触り、耳と耳の間に顔をうずめたときのにおい、顔を舐めてくる舌の感触、どれもありありと思いだせる。しょっちゅう夢にも出てくる。

世の中的には、ペットでも犬でもわんこでもなんでもいい。それはカテゴリーの総称でしかない。


ぼくにとって彼女は世界で唯一の存在であり、まぎれもなく家族である。