もうお腹いっぱいである。
笑い、ハラハラし、恐怖し、気づけば感動の涙が流れている。
これでもかと観客を飽きさせない怒涛の展開で2時間半はあっという間だ。
実際の事件を題材にしているとはいえ、たとえばアメリカン・スナイパーやゼロ・ダーク・サーティのような、ドキュメンタリーを観ているような臨場感ではない。
悲惨なシーンも多く出てくるけれど、それだけを観せたい作品ではない。あくまでも誰が観ても楽しめる、間口の広いエンターテイメント映画である。
けれど史実に光を当て、二度と同じことが起きないようにと願う気持ちは強く伝わる。そして日本で同じことが起きたとき、自分はどうするのか、そんなことを考えさせられる。
それにしてもソン・ガンホ。
ちょっと抜けて、ケチくさく、うだつの上がらない、でも義理人情に厚く、心優しく、秘めた勇気をもっている。そんないくつもの面をもった一人のキャラクターが本当にリアルに演じられている。見事としか言いようがない。
日本で言えば彼に匹敵する俳優は大泉洋くらいだろうか。
いわゆる「通」受けする作品ではないかもしれないけど、少しでも多くの人に見てほしいし、見て損はないと思う。