今さらながら、野球がおもしろい。
部活経験もなく、大人になってからたまに草野球をやっている程度なのだけど、我ながら年々バッティング能力が向上している気がする。(残念ながら守備は年齢とともにどんどん衰えてきている実感がある…)
生意気なことを言うようだが、ヒットならば狙いにいけばある程度打てる自信がある。
ふだん打席の中では(ぼくは左打席なので)「ショートの頭の上」というタイミングで振ることを一番のプライオリティとして意識していた。そうするとミートの確実性があがり、ヒットは打ちやすい。
ただしそのタイミングで振ると、長打を打つにはかなりのパワーが必要になる。
打球を遠くに飛ばすには、当然ながらバットの遠心力が最大になるところでミートするのが一番効率的なのだが、「ショートの頭の上」打法では、その遠心力が半分くらいしか使えないからだ。
実際に、会心の当たりでもセンターオーバーや右中間の深いところまでがせいぜいで、柵越えには至らなかった。
そこで思い切って、これまでの打法を捨てることにした。
新打法のポイントはこんな感じだ。
・構える際には、できるだけ上半身を脱力する。
・バットは高く、後ろに引いておく。(落合の本によると、バッティングはいかに早くトップをつくって準備できるかが何より重要なのである)
・投球動作にあわせて足を上げると同時に、バットをさらに後ろに高く持ち上げてトップの態勢をつくる。(足をあげることで体が前に倒れそうになるのを、バットを後ろに引くことでバランスをとるイメージ)
・後ろの軸足を中心に、バットを振り下ろしながらその場で回転するイメージで振る。
・スイングの際には、軸足の内側から、踏み出す足の内側に体重移動していくイメージで足を動かす。(これまた落合本の教え)
・フォロースルーをできるだけ大きく
これらの動きの大前提となるのは、とにかく体の力を抜いて「でんでん太鼓」になったイメージで振ること。そして内側からバットを出していく「インサイドアウト」だ。
インサイドアウトについては、素振りの際に壁やフェンスの近くに立って振ることで、自然と身につくようになる。
これが今年から取り組んでいる新しいフォームだ。
今までは、ほとんどタイミングのことしか意識していなかったところから、大きな変化である。
実際に、素振りの段階でかなりスイングが強く鋭く変わった感覚があった。
バッティングセンターで打った時も、打球に力が伝わっている気がして、手ごたえを得た。
そしてついに、今年の実戦2戦目にしてホームランが出たのである。
しかもそれはいつもの草野球ではなく、年に一度の会社の野球大会という晴れ舞台。両翼90mはある立派な野球場のライトフェンスを軽々と越えていく完璧な当たりだった。
それは最高の快感だったのは間違いないのだけど、ぼくが「野球って面白い」とあらためて思ったのは、その後の草野球の試合である。
ホームランですっかり自信を得たぼくは、その日のピッチャーの投球練習を見て「今日も打てそうだな」と感じていた。
しかし打席に立つと、全然違った。
とにかく変化球の曲がりが鋭く、まったくタイミングが合わない。1打席目は変化球で追い込まれ、ボール球のストレートを降らされて三振。
そして2打席目、ぼくは変化球を捨ててストレートを打ちにいくと決めていたが、バッテリーはそれを見透かし、初球・2球目と変化球攻め。またあっという間に追い込まれて3球目はストレート。きたっと思ったがこれまた内角の絶妙なボール球で、バットを止めるのも間に合わずに三振。結局、二打席とも同じパターンでやられてしまった。
そしてその次の試合。またしても変化球がいいピッチャーで、タイミングが合わずに2打席ノーヒット1三振。
おそらく去年までの打法であれば、バットに当てるくらいはできただろう。運が良ければヒットも打てたかもしれない。しかし今のホームラン狙い打法は、当たれば強い打球になるが、確実性は劣るのだ。ホームランは打ちたいが、三振は悔しい。
来年に向けてのテーマは決まった。今のホームラン打法のスイングを維持しながら、タイミングを「ショートの頭の上」にする。
これはいまのぼくにとってはかなり難易度が高い。打席の中で意識することが多すぎると、どこかがおろそかになってしまうのだ。これをやるには、まず今のスイングを徹底的に体に覚えさせる必要がある。自然と理想のスイングができる状態になれば、打席ではタイミングに集中できる。冬の間に振り込んで来シーズンに備えようと思う。
野球では、自分のスイングと投手のボールという変数の掛け合わせで、無限の結果がうまれる。1打席、1球たりとも同じものはない。その中で、少しでも確率高く良い打球を打つために、工夫をし、トレーニングをする。結果がついてくることもあれば、全然ダメなときもある。ダメならその原因を分析して、克服するためにまた考える。ひとつ克服したら、それまでできたことができなくなることもある。とにかく終わりがない。キリがない。でもそれを繰り返す中で、これまでよりもうまくなった自分を感じられる瞬間がある。そのときの充実感は、他に代えがたいものだ。
野球は楽しい。体が動く限り、うまくなっていきたい。