前から気になっていた松原耕二さんの本。
NEWS23などTBSの報道番組でお馴染みの方ですが、松原さんのことを初めて知ったのは、ほぼ日の「ぼくは見て
おこう」というコーナーでした。
その時々で松原さんの関心のあるテーマや人について、静かに、けれどひとつひとつ確実に心に跡を残していく
ような独特の語り口が印象的で、最初に少し読んだときから、好きだな、と思える文章でした。
本作を読んでみて、ほぼ日のコラムの印象とは異なり、作品全体を覆う「熱さ」が意外でした。
セリフの言い回しや、ストーリーの展開のさせ方などはもっと上手な作家もいるのでしょうが、そんな技術的なことを補ってあまりある、読者を惹きつける力があります。
おそらく松原さんの小説にかける意気込み、そして何より「インタビュー」にかける想いの強さが作品に迫力を与えているのでしょう。
これまでの読書歴で好きな作家や印象に残る作品を思い返すと、村上春樹や宮本輝、司馬遼太郎、山崎豊子などが思い浮かびますが、どれも「腹の底から」書きたいと思って書いていることが、読んでいて感じられるものばかりです。
町田康の小説なんかも、凡人のぼくにとっては理解を超えるようなところもありながら、そのすさまじい熱に圧倒されながら読み切ってしまいます。
松原さんの本作は、ジャンルとしては純文学というよりエンターテインメントに近いですが、とにかく「書きたくてたまらないこと」を「精魂込めて」書いたことが伝わってきて、読後感も気持ちの良い小説でした。
ほかにも、NGOを舞台にした作品もあるようです。そちらも熱い想いがこめられていそうで期待できます。ぜひ読んでみたいと思います。