ついに長男が鍵っ子デビューをした。
新学期から毎週木曜日に次男が習い事をはじめ、うちの奥さんがそれに付き添うので、長男が学校から帰宅したときは家に誰もいなくなる。
最初そのことを聞いたときは、ちょっと不安だった。3年生になるとはいえ、これまで家に独りでいたことなんてない。うまく鍵を開けられないとか、家に入ったあとに鍵をかけ忘れて、変な訪問者がやってきたら大変だとか、いろんな心配な気持ちが生まれた。
ましてや彼は奔放な次男と異なり、何事もあまり自分で決められない。どちらかというと常に親の顔色をうかがいながら、判断をあおぐタイプである。
何かが起きて独りで困っている様子が目に浮かび、落ち着かない気分になった。
そこで、まずは鍵をもつ生活に慣れさせようと、事前に何度か学校に持っていかせ、帰宅時に自分で開けて入ってくるようにした。
練習の仕上げは本番木曜日の2日前、彼の帰宅時に奥さんはあえて外出し、「誰もいない家」に帰ってくる経験をさせた。
彼には、家にいるもよし、遊びにでかけるもよし。出かけるときは行先をメモに残し、ちゃんと鍵をかけて行くように、と言い聞かせた。
きっと帰宅したらお母さんが帰ってくるまで、家でじっとしているのだろうと予想していた。
果たして彼女が帰宅したとき、彼は出かけており、ホワイトボードにちゃんと「●●くんと△公園に行ってきます」と書かれていたそうだ。おまけに自分の似顔絵と吹き出しまで付ける余裕っぷり。
親が思っている以上に、子どもはたくましい。
そして彼は少しずつ変わってきた。
なんとなく堂々としてきたのだ。親と話すときも、自分の考えをしっかり伝えられるようになってきたと感じる。
もちろん放っておいても日々成長するものだろう。でも鍵を持たせるようになったことが、彼において「親に信頼されている」「一人前に扱われている」という自覚につながったんじゃないかと思っている。
「かわいい子には旅を。」はるか昔から言い伝えられるこのことわざ。彼の成長を嬉しく感じながら、その意味を噛みしめている。