ぼくはあの人のことがあまり好きではない。
もっと前は、はっきり嫌いだった。
だいぶ付き合いが長くなってきて、多少の慣れや、意外な一面を見たりすることで「嫌い」というほどではなくなったけれど、それでもやっぱり苦手だ。
なぜこの人のことが好きではないのか、考えてみた。
すぐに感情にまかせて怒鳴る、女性にセクハラ発言をする、やたら決まり事をつくりたがる。いろいろ思いつく。でも一番は「相手の立場によって態度を変える」ことだと思った。
自分より目下の相手にはとにかく横柄で尊大。けれど上の人にはやたらとペコペコしている。そんな姿を見せられるたびにうんざりしてしまう。
ぼく自身にそういう面がないとは言わない。というかきっとあると思う。でも少なくとも、そういう風にならないよう、できるだけ意識して生きているつもりだ。
そこまで考えてふと思った。
自分が気を付けたり心がけたりしていることについて、それに「無頓着」な人に対してぼくはイラっとするようだ。
ほかにも、すぐに会社のグチを言うとか、体調が悪いことを表に出してアピールするとか。自分がそうならないように意識していることをやっている人には、つい冷たい反応をしてしまう。
今までそんな自分が正しいように思えていたけど、実はぼく自身が「我慢していること」を「我慢しない」人に対して腹を立てているだけかもしれない。例えるなら、コンビニのレジに並んでいるときに、列に気付かず割り込んで会計を済ませる人に感じる憎しみのようなものかもしれない。そう考えると、なんだかすごく心の狭い己を自覚してしまった…
まあいいじゃないか、とゆったり構えていられる、もっと大きな人間になりたいものです。