久しぶりに母と電話をした。
持病の関節痛がひどいらしく、口調も元気がなかった。
「父さんは元気?」と聞いたら「まあ、いろいろとね」と口を濁した。「そっか」と、それ以上は聞けなかった。
子どもたちが一人前の旅行代金がかかるようになってからは、数年に一度しか会いにいっていない。前回も2年前だ。そのときも体調もすぐれないからという理由で、泊まることはなく、ぼくらが買ってきた夕食をみんなで食べて2~3時間の滞在でホテルに戻った。
当然両親ことは心配だ。でもできることがほとんどない、というのも事実だ。
病院を紹介したとしても連れて行ってあげたり、治療費を負担できたりするわけでもない。
ましてや慣れ親しんだ故郷を離れて、ぼくらが住んでいる以外に縁もゆかりもない土地に引っ越してくるとはとても思えないし、ぼくらが親の近くに移住するのも現実的ではない。
だから、いつの頃からか詳しく状況を聞いたり、心配してみせるのはやめた。
その代わりにぼく自身のことや孫である子どもたちのこと、どこに遊びに行ったとか、こんなことをした、という連絡をできるだけ頻繁にしようと思っている。
自分が親だったら、自身のことよりも、子どもが健康に幸せに暮らしてくれることが一番だという気がするからだ。
親を心配するよりも、親に心配かけないこと。何歳になっても、まずはこれが子どもとしての一番の務めだろう。という言い訳を心の中でいつも繰り返している。