本やマンガを人に薦めるというのはなかなか難しい。ぼくも幼いころ、父親や親戚のおじさんから薦められたり、買ってもらったりした本が、どうにも興味がもてず本棚に眠ったままにしてしまった記憶がある。
でもたとえば、高校に入って下宿先に移るとき父親から譲り受けた「竜馬がゆく」は長らく埃をかぶっていたが、社会人になってなんとなく開いてみるととても面白く、一気に読み終えてしまった。
映画にも同じことがいえるが、そのときの自分の成熟度や精神状態によっても、感じ方が大きく変わるものだ。
とはいえ一旦「つまらなさそう」という印象がついてしまうと、その後なかなか手に取るハードルが高くなるのも事実。だから子どもたちに薦めてみたい作品があっても、どのタイミングで触れさせるか、ということにそれなりに気を遣っている。
でも、これまで息子たちがうまく関心をもったものを振り返ると、まず大前提として、ぼく自身が面白そうに読んでいる、ということがある。
昔子どもの頃読んでいた手塚治虫やちばてつや作品などは、子どもに薦めようと思って本棚に置いたものの、初めは興味を示さなかった。でもぼくが久しぶりに読むとやっぱり面白く夢中になって読んでいると、横から子どもたちも覗き出し、いつしか手に取って争うように読み始めた。そして気に入ったシーンや登場人物などについて話しかけてくる。ぼくと共通の話題をもてたことがとても嬉しそうだ。
そう考えると、子どもだからとか、教育のためにこれを薦めようというのではなく、まずは今の自分でも楽しめるもの、というフィルターをかけて選んでいくことがポイントなんだろう。そしてそれは本やマンガに限らず、子どもに経験させたいことなら何でも同じだという気がする。